満足度:★★★★★(文句なし!)
利用用途:ランチ
町家が軒を連ね風情漂う祇園にひっそりと佇む名店 祇園「丸山」でランチ。
正直言って京都のお店はあまり知らなかったのですが、東京で食べる日本料理以上に巧みに季節感が反映されている事や料理のしつらえがきちんとしている事に驚かされました。
この日はカウンターのお席。お造りを作っている姿を見ながら食事を開始です♪
まずは桜の季節と云う事で、『桜茶』が出されました。ほんのり薄紅色の花が浮かんでいてとても綺麗。塩漬けの塩分のみの味つけのはずなのに、とても上品。
最初は、『タケノコと菜の花の炊き合わせ』という春満載の一品。飾りの素揚げしたつくしが愛らしく、雲丹の山吹色と菜の花の緑が目に美しい、木の芽味噌のほのかな甘味と香りが全体をまとめています。タケノコ自体もクリーミーというか、コクがあるというか今まで食べた事がない程美味しいタケノコでした。
ほどなく、『桜鯛とこしびのお造り』が登場。「こしび」とは本マグロの子供の呼び名だそうで、マグロもブリと同じく出世魚なんだと板前さんが教えてくれました。こしびの皮を焼いたものも添えられていて香ばしい香りも楽しめます。このこしびももちろん美味しかったのだけれど、特筆すべきは、「桜鯛」。今まで食べたどの鯛よりも身がとても甘く、ぷりぷり、こりこり。鯛を食べて本当に美味しいと唸ったのは初めてです。
椀物は『道明寺桜餅の御椀』が登場。これが見た目がとっても美しかっ
た。思わず溜め息がでました。かすかに白濁した汁の中には、海老そぼろの入った道明寺桜餅と透けるような白きくらげが入っており、京人参と大根で作られた桜花の飾りのまわりには、花びらを模したあられが散りばめられています。目で桜の花を楽しみつつ、道明寺を包み込む桜の葉とほろほろと崩れる桜餅を食べるとまるで春を食べているような錯覚さえ覚えました。
焼き物は『桜マスの南部焼き』。甘味のある味噌ダレをかけながら焼いた一品だそうで、白胡麻と味噌ダレのついた表面の感じが南部鉄を思わせることから「南部焼き」との名称がついたとの事。味噌の甘みとゴマの香りが申し分なく、しっとりふっくらとした桜マスの味を引き立てていました。
次は、『蒸し寿司』です。手にすっぽりと入るぐらいの小さな丸みのある器の中に、桜でんぶやシイタケ、干瓢が入った酢飯と錦糸卵がたっぷり、トップにはガリで作った桜の花弁と木の芽が彩りを添えています。ご飯物ですが、とてもさっぱりとした軽やかな一品。
続いて、『穴子と蕗の蒸し物』がでました。拍子切りしたヤマイモの上に、穴子と蕗、椎茸が入ったもの。蒸した穴子はホロホロと柔らかく、程好く炊かれた蕗はシャキシャキとして旨みがぎっしり。木の芽の香りも申し分なかったです。
〆のご飯前に、桜の枝と葉が添えられたお盆と共に珍味が登場。 
・ 青菜の白和え
・ モズク
・ フルーツトマト
香りのとてもよい白和えも、すっきりとした甘さが素晴らしいトマトもとても美味しかったのですが、特筆すべきは、モズク。とても細いのに味はしっかりとした味でシャキシャキとしてとても良い歯応え。このモズクも驚いた一品です。
〆のご飯は、お客様一組毎に時間を合わせて釜で炊き上げた『白飯』と『香の物(沢庵の千切りと白菜、ミブナ、昆布、梅干)』、そして『味噌汁』です。こちらの地下水で炊き上げたという白飯はとても甘く、香りと艶は最高。香の物も一つ一つが滋味溢れるとても美味しいものでした。
最後は水菓子。マンゴーシャーベットに苺とオレンジが添えてあります。水菓子というだけあって、シャーベットであってもけして甘過ぎず、素材の持ち味がそのまま伝わる味でした。
今回こちらのお店で学んだのは、素材を大切に丁寧にきちんと使えれば、こんなに素晴らしい味になるんだという事。これまで手間をかけている(調理されている)にもかかわらず、こんなに素材の味がダイレクトに伝わる料理にはお目にかかったことがなかった。本当に美味しかったし、味や食材、そして料理に対する姿勢について考えさせられました。
料理に対する姿勢というのは、なにも調理をする姿だけに限らず、食事をする場を提供するホスピタリティも含めてのこと。食事をしている間に作り手からかけられる何気ない言葉とか料理をサーブするタイミングとか、祇園丸山は全てにおいて完璧だった。
お店を立ち去る際に料理人の方が玄関まで送りをしてくれ、その後も、こちらが通りを曲がり見えなくなるまでずっと送ってくれたその姿がとても印象的でした。

祇園丸山
電話:075(525)0009
定休日:水曜日
京都市東山区祇園町南側570-171
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